NICT入所のきっかけ
人間への興味からサイバーセキュリティへと目が向き、NICTの研究者へ
もともと幼少期より、人の様子を見て「なぜその人はいま、その行動をとったのか。どんな判断過程があったのか」を考えることが好きでした。そして、その興味関心を持ったまま、大学・大学院・ポスドク時代を通して人工知能や認知科学分野の学問や研究を行うなかで、人間は必ずしも精確な情報収集や判断に基づいて行動をしているわけではない、ということを示すデータを多くみるようになりました。
その後、博士課程を経てNII(国立情報学研究所)が中心となって進めていた「ロボットは東大に入れるか?」というプロジェクトでオーガナイザーを務めました。そこで、人間と人工知能の違いとは何か、ということを確かめるため、当時の上司とともにリーディングスキルテストプロジェクトを発案・展開しましたが、進めるうちに、このプロジェクトを通じて徐々に分かってきた問題がある種の大きな社会全体の課題につながっているように感じ、その解決に取り組みたいという思いが強くなり、そこでサイバーセキュリティに目が向くことになります。その後、2017年1月にサイバーセキュリティ分野で活躍されている横浜国立大学の吉岡准教授(当時)のところで特任助教として働きはじめ、2020年4月にNICTにパーマネント研究職員として採用されました。
仕事内容
人がICTのリスクを正しく理解し安全に使うための問題を発見し解決する
私は、サイバーセキュリティ研究室のユーザブルセキュリティチームのとりまとめをしながら、人間のサイバーセキュリティに関する問題を解く、という研究を続けています。例えば、セキュリティ上問題があるという通知が来ても、多くの人はその通知を無視してしまいがちです。この無視される確率をどう下げるか、どうやったら過度に不安をあおったりその逆に軽視されて見過ごされたりすることなく、人の心に響くような通知ができるのか、人がリスクを正しく理解し安全な行動を取るために重要なことは何かを研究しています。人が楽しく幸せに生きる礎は衣食住といわれてきましたが、現代はそこにICT (Information and Communication Technology) が加わったといっていいでしょう。災害が起こり水道や電気・ガスの供給が止まったときに頼るのは情報であり、ICTです。しかし、これらインフラのなかで仕組みと使用上のリスクの理解が最も難しく、かつそれらの理解なしに安全に使えるものとは到底いえないのがICTでもあります。みんながICTを理解し、騙されない、利用されないために、個人としてもチームとしても、研究を続けていきたいと思っています。
今後の目標
エキスパート集団としてユーザブルセキュリティ分野で世界で戦えるチームに成長することを目標に
チームとしての目標は、ユーザブルセキュリティ分野で日本最強のチームに成長して、世界のトップカンファレンスで戦っていけるようになることです。そのためには我々一人一人がスーパーエキスパートとして成長していかないといけませんし、私自身もそうなることを理想としています。そして、社会へ私たちの研究を役立ててもらうことが重要だと思っています。社会貢献はNICTで共通した価値観であり、またそれこそが私にとってNICT入所の決め手です。個人としても、世界にプレゼンスを示せるような研究を続けてきたいと考えています。